専任技術者
建設業許可を取得するにあたって、各営業所ごとに、その営業所専任の技術者(専任技術者)を配置していることが必要です。
経営業務の管理責任者が、主たる営業所のみで良かった点と比べると営業所の数が増えるほど、専任技術者の数が増えていくことになります。
逆に営業所が主たる営業所のみという場合は、経営業務の管理責任者1人と専任技術者1人となります。
経営業務の管理責任者と専任技術者は兼任できますから、例えば社長が両方を兼任しているということも多々あります。
一般建設業許可であれば、原則下記(1)~(3)のいずれかに該当する必要があります。
(1)学歴に関係なく、許可を得ようとする業種について、10年以上の実務経験を有すること
(2)学歴とそれに応じた年数以上の実務経験を有すること
(3)業種ごとに専任技術者として認定される資格等を有すること(資格等によっては実務経験が必要な場合もあります。)
特定建設業許可であれば、下記(A)(B)のどちらかに該当する必要があります。(※指定建設業はAのみ)
(A)業種ごとに専任技術者として認定される資格等を有すること
(B)一般建設業の専任技術者になることができる要件(1)~(3)のいずれかを満たしたうえで、許可を受けようとする建設業に係わる工事に関して、2年以上一定の指導監督的実務経験を有すること
また、経営業務の管理責任者は、同じ期間を使用して複数の建設業の経管になることが可能でしたが、専任技術者はできません。
例えば、一人で土木工事業ととび・土工工事業の双方の実務経験を10年で積んできたという場合でも、どちらかの専任技術者にしかなることができません。
双方ともに実務経験10年で証明したい場合、合計で20年の実務経験を証明しなければなりません。
建設工事の実務経験とは、「建設工事の施工に関しての技術上の全ての職務経験」を言います。
実際に工事の施工に従事、又は指揮監督した経験は勿論、工事発注にあたって設計技術者として設計に従事した経験や現場監督としての経験も含みます。
また、土工や見習いとしての経験も含めることができます。
但し、現場で単純な雑務を行ったのみといった経験や事務作業のみの経験を含めることはできません。
従業員としての経験を含むことが出来る点も経営業務の管理責任者との相違になります。
ちなみに実務経験のみで証明を行っていく場合でも、別の建設業の工事経験を振替えることで短縮できることがあります。
例えば、とび土工の許可を取得したい場合、土木工事業を4年以上、とび土工工事業を8年以上の実務経験があれば、とび土工の実務経験は10年未満ですが、とび土工工事業の専任技術者になることができます。
さらに、土木工事業を10年以上、とび土工工事業は8年以上の実務経験があれば、合計18年で双方の専任技術者の要件を満たせることになります。
但し、振替が可能な業種については、制限があります。
振替が可能な業種については、業種ごとのページで記載しています。
「(1)学歴に関係なく、許可を得ようとする業種について、10年以上の実務経験を有すること」を証明する場合
原則として、許可を得ようとする業種について、10年以上の実務経験があることを証明していく必要があります。
一人の方が複数業種の専任技術者としたい場合、「業種数×10年」の実務経験と証明資料が必要になります。
また、実務経験の振替が可能な業種については、必要な年数分の資料を提示して証明していくことになります。
工事の契約書や請求書といった書類を必要年数分提示して証明するだけでなく、過去に建設業許可を受けていた業者で経験を積んだ場合であれば、建設業許可申請書や変更届の一部を提示することで証明できます。
但し、電気工事業と消防施設工事業に関しては、別の法律で、工事をするには一定の資格が必要と定められています。
その為、実務経験では専任技術者として認めないとしている行政庁もあります。
「(2)学歴とそれに応じた年数以上の実務経験を有すること」を証明する場合
指定学科を卒業していることで、本来10年必要な実務経験を短縮することができます。
大卒で3年以上、高卒で5年以上の実務経験で足りることになります。
専門学校を卒業している場合、高度専門士や専門士の称号があれば大卒と同じく3年以上、それ以外は高卒と同じく5年以上の実務経験で専任技術者の要件を満たすことができます。
必要な年数分の実務経験を証明する資料と指定学科を卒業していることが分かる卒業証明書等が必要になります。
また、業種によって指定学科が違うため、その点は注意が必要です。
どのような指定学科を卒業していれば、実務経験年数が短縮されるかについては、業種ごとのページで記載しています。
但し、電気工事業と消防施設工事業に関しては、別の法律で、工事をするには資格が必要と定められています。
その為、実務経験では専任技術者として認めないとしている行政庁もあります。
「(3)業種ごとに専任技術者として認定される資格等を有すること(資格等によっては実務経験が必要な場合もあります。)」を証明する場合
最も簡単に証明が可能なのが必要な資格を所持していることです。
ほとんどの場合で、資格を証する書面のみで認められます。
資格等によっては実務経験が必要な場合がありますが、その場合は必要な年数分の実務経験を証明する資料を合わせる必要があります。
資格ならどんな資格でも良いわけではなく、業種により認められる資格が決まっています。
それら以外の資格を取得していても、専任技術者としての要件を満たすことはできませんのでご注意ください。
どの資格であれば専任技術者としての要件を満たすことができるかについては、業種ごとのページに記載しています。
「(A)業種ごとに専任技術者として認定される資格等を有すること」を証明する場合
上記(3)と同じように資格を証する書面を提示することで特定建設業許可の専任技術者としての要件を満たすことができます。
また、指定建設業に関しては、特定建設業許可の専任技術者になるには、この方法でしか認められません。
特定建設業許可で専任技術者として認められる資格は、一般建設業許可で専任技術者として認められる資格より少ないですが、資格によっては、一般特定問わず専任技術者になることができるものもあります。
どの資格であれば専任技術者としての要件を満たすことができるかについては、業種ごとのページに記載しています。
ちなみに指定建設業とは、以下の7つの業種を指します。
土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業
「(B)一般建設業の専任技術者になることができる要件(1)~(3)のいずれかを満たしたうえで、許可を受けようとする建設業に係わる工事に関して、2年以上一定の指導監督的実務経験を有すること」を証明する場合
指導監督的実務経験というのは、以下の3つを全てを満たした経験を指します。
・元請として、
・請負代金が4,500万円(税込)(昭和59年10月1日前の経験にあっては、1,500万円、昭和59年10月1日以降平成6年12月28日前の経験にあっては3,000万円)以上のヶ許可を受けようとする建設業に係わる工事について
・建設工事の設計、施工の全般にわたって工事現場主任や現場監督者のような立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験
上記の内容を満たした経験を2年以上積んでいることを証明する資料を提示することになります。
一般建設業許可の専任技術者になることができる要件のいずれかを満たす資料と合わせて提示し、証明を行います。
なお、指導監督的実務経験と実務経験の期間が重複している場合、双方の実務経験期間として算定されます。
また、指導監督的実務経験は2年以上の経験年数が必要ですが、これは各工事の工期が2年以上必要という意味になります。
ちなみに指定建設業では、この方法で特定建設業の専任技術者になることができませんので、ご注意ください。
実務経験の証明については、上記が一般的なものになります。
行政庁によっては、上記以外の資料を要求される場合も当然ありますのでご注意ください。
そして、専任技術者として認定されるには、実務経験の証明資料だけで良いというわけではありません。
専任技術者は、常勤であることも条件です。
この常勤性の確認ができる証明資料も別途必要になります。
これは専任技術者になる人によって必要な資料は変わりますが、例えば健康保険被保険者証とその標準報酬決定通知書であったり、所得税の確定申告書が必要というケースがあったりします。
全ての資料を揃えて、初めて専任技術者として認められることになります。